「パナソニックは君らを捨てた」 ハイアール副社長

リストラの末、多くの社員が関西の大手電機メーカーを去った。彼らが新たに直面した現実も、生易しくはなかった。日本メーカーから中国メーカーへ移った男たちの行き着く先は――。


ハイアール日本法人の奥副社長は言い聞かせる「三洋の時みたいに、驚くような製品をまた」(京都市南区)
 「君らはパナソニックに捨てられたんやぞ。それが分かってへんのか」

 中国家電大手、海爾集団(ハイアール)が昨春、京都に新設した研究開発センター。その真新しいオフィスで開かれた開発戦略会議の途中、奥俊一郎(62)はたまらず声を張り上げた。

■新天地は“中国”

 「もっと死ぬ気で仕事をやってほしいんだ」。奥が腹を立てた相手は、三洋電機からハイアールに移って来た社員たちだった。その年の初め、ハイアールはパナソニックから、子会社である三洋電機の白物家電事業を買収した。同時に多くの三洋社員もハイアールに移った。

 奥はそんなリストラの憂き目にあった社員も容赦したくなかった。「もうここは三洋じゃないんだ」

 奥自身も三洋電機の出身だ。洗濯機一筋40年の会社人生を歩み、定年退職後の2010年、誘いを受けてハイアールの日本法人に入社した。今では副社長として洗濯機開発の先頭に立つ。

 一呼吸置き、奥は続けた。「簡単に(開発が)できないと言うな。利益を出さなかったら、また……」。奥はそれ以上の言葉を、辛うじてのみ込んだ。ハイアールにも捨てられる――。

■鳴った携帯電話

 奥もライバルである中国企業への転職には迷いがあった。だが三洋を定年退職したその日、奥の携帯電話が突然鳴った。

 「オクさん、明日からウチに来てよ」。電話の主は現在、ハイアールの日本法人でトップを務める杜鏡国(50)。期待されることへの渇望、根っからの技術屋である奥には、それが素直にうれしかった。

 結果重視の海外メーカーの現実は、奥の想像以上だった。「ここはパナソニック以上に厳しい。利益を出せなかったら全員が不幸になる」。古巣の元部下らとの再会にも、素直に喜ぶ心境にはなれなかった。奥は今、中国本社からのどんなむちゃな注文も断るな、と部下に言って聞かせる。

 期待に応えることこそ「ハイアールが日本で社員を雇う意味にほかならない」。奥は自らにも言い聞かせる。「そんな積み重ねの中から三洋の時みたいにさ、驚くような製品をまた生み出せたらいいよね」。そう言って奥は険しい表情を少しだけ緩めた。

*ハイアール情報
http://www.haier.com/jp/

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